DOGWOOD調布 増築

今回の任務は閉店された某ジムのボルダー壁をそのままDOGWOOD調布店さんに移築するというもの。

移築というと、まず現状の壁の精密な採寸から始まり、それをCADに落とし込んで。。。

というような作業から始まると思いきや、さにあらず。もうすでに壁はばらされて、調布店に搬入されているというではないか!そして図面、もとの写真など形状を記憶してくれている物証が何もない。

調布店へいざ内見しに行くと、まず「図面がないのですが、組み立てることは可能ですか?」

そしてそこには大量の資材がきれいに山積みされていた。「できます。」と即答。そしてボルダー壁の分解されたパーツを見ていくと。

大きく分けて [単管、クランプ類] と [木材2x4材 ラワン合板18mm]

下地単管編

移築前の閉店されたジムでは単管、クランプ類で建てられていたようです。インパクトドライバさえあれば組み立てられる工法なのでDIYの方にもおすすめの工法。

単管クランプで建てる場合、考えなくてはいけないのは①建物の躯体と単管をどう接合するか、②鉄である単管と、木(モクと業界では呼ぶ)であるパネルや垂木(この場合は2x4材)をどう接合すればいいかということ。

左からキャッチクランプ、ラッパ付き単クランプ、垂木クランプ

①建物躯体との接合(H鋼などの場合)は上写真一番左のようなキャッチクランプという頑丈なアゴが付いたクランプでH鋼を挟んでしまえばよい。

②木との接合は使うクランプとして2種類あり、一般的に流通している垂木クランプと(上写真一番右)と、いわゆる業界でいうラッパ付き単クランプ(上写真の真ん中)というのがある。この二つのクランプの違いをメリット、デメリットで考察すると、

垂木クランプ:メリットはホームセンターで安価で買える。(確か250円前後)デメリット:2x4材に固定する際2x4材が荷重を受ける方向の垂直面にビス(ネジの事)を2本で固定するためやや弱い。仮設の仕切り壁などで使用されることが多く、クライミング壁と違い垂直に建っているし、引っ張りの力がかかることを前提にしていない壁用。
ビスは引っ張りに対してはかなり強いが横方向の折れには弱いという性質がある。

ラッパクランプ:メリットは2x4材が引っ張られる荷重方向と平行にビス4本で保持。デメリット:壁建て屋の味方、東京都福生市にある笹本金作商店でしか取り扱いを見たことがない。一個あたり500円前後と垂木クランプと比べると高い。今回の工事はもともとラッパクランプを使用していたのでそのまま流用させてもらった。余談ですが20年以上前は垂木と単管を番線で固定していた時代でした。今でも仮設のイベント壁などではありかな。

もう一つ強度的な話をすると、一概に骨組と言っても単純に後ろからひけばいいというものではない。というのも真後ろに屈強なH鋼なりコンクリート壁(RCという)があればよいのだが、倉庫などの建物の場合は地上4m付近にH鋼があって、地面にアンカーを打つとした場合、4mも鉄材なり木材なり飛ばしてしまうとかなりの弱さになってしまう。この時どう剛性を保つかはトラス構造にすればよい。いわゆる三角形の原理である。三角形は四角形と違い任意の3辺の距離で一意に決まる。(複数ではなくただ一つという意味)要は三角形をたくさん作ればよい。四角形は平行四辺形を思い浮かべてもわかるように対角線を一つ決めないと形が決まらない。(対角線をいれると二つの三角形になる。)

写真のようにアングルで組む場合と木で組む場合を上げてみた。実はこのトラスを作るのに適してるのがこのアングルだったり木だったりする。単管は誰でも気軽に♪という工法だがデメリットとしてこのトラス構造を作るのがかなり手間がかかるのだ。

今回運がよかったのは前述した真後ろに屈強なH鋼が3本もいい間隔で流れてる超レアな壁建てしやすい優良物件。

木材編

パネルには元の傾斜の角度と番号が表面に記載されていたが角度の表記が正確とは限らない。

ボルダー壁を設計するとき、通常は足元立ち上がり90度の約450mmのベースとなるパネルを作ってからその上にお好みの角度、形状を載せていき、干渉しあうパネルをカットして作図していく。

今回は通常とは逆の手順で進めていく。パネルのパーツと角度を知る手がかりとなるひき割りが数本。重要なベースとの間の引き割りは全て消失していた。

引き割り作成中

引き割りとは角度が違うパネル同士を2x4材でつなげる際にこの2x4材に角度をつけて丸鋸でひくことにより、お好みの角度でパネルをつなげられるという壁建ての要になる垂木の事。

パーツは四角形や三角形など多数。採寸はしてあるのでCADにおとしてみるもののどこにどの角度でベースの上に載せていいか皆目見当もつかない。これは立体的なジグソーパズルを完成させるようでなかなかチャレンジングで楽しい。

完成した図面がこちら。図面が出来てしまえば、もうパネルは切れてるわけだし、後は組むだけ。

足元ベースは一直線ではなく出入りがある。これはマット図面が奇跡的にあったので助かった。このマット図面がなかったらかなりやばかった。

一番苦労したのがこちらの140度パネルの組み立て。大きくて傾斜のある面はただでさえ大変なのにこの場合は三角形の頂点が一番下に来ているので頂点を壊さないように細心の注意を要する。

右辺が湾曲していたのでカットしなおしたパネル

マットも入れなおしたらぴったり♪ 完成~♪ 工期は4日ほどでしたが、何よりスタッフさんに気を遣ってもらいかなりやりやすくして頂きました。スタッフのM木君本当にありがとう。搬入に荷揚げ用エレベータがあるのもなかなかレアな優良物件ですね。

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